弱虫ヴァンパイアブログ!ヨワブロ!!

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Legend0 「ヴァンパイアごっこ」

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*フィクションです

*誤字脱字はコメント欄か、Twitter(@ yowapro、riisa_motoyama)にて指摘お願いします

 

…河井町には吸血鬼にまつわる言い伝えがあります。

吸血鬼が初めて生まれた町、ひとつの星を作った、奪われそうになった町を助けてくれた、町の娘を誘拐した、死んだ少女が吸血鬼になった…色々な言い伝えがあるそう。

 吸血鬼の見た目は人間とあまり変わらず、太陽や十字架も効かないやつがいるとか。

「つまり、この中にも吸血鬼がいるのかもしれませんね。」

先生の読み聞かせが終わると、図書室にいた小学4年生の多くが拍手をしていた。

「有り得ない…」

みんなは声がした方を向いた。

「吸血鬼がいる?そんな非現実的なことは有り得ません!」

そこには先生に強い眼差しを向ける、綺麗な顔立ちをした男の子がいた。

 

***

 

1時15分。

掃除の時間まであと5分あるが、オレは校庭や校舎で遊び回っている児童を避け、掃除がある図書室に行った。

学校生活に慣れてしまうと5分前行動がおろそかになってしまうが、4年間1度も忘れたことは無い。

図書室の掃除。内容はほうきで床をはいて、雑巾で机と本棚の上を拭く、というものだった。

…そりゃほうきを取るよな。早い者勝ちだし。

ほうきが入っているロッカーを閉めると、ある本が目に入った。

さっき総合の時間に図書室で先生が読んだ、「河井町と吸血鬼」と言う本だった。

手に取って、改めて読んでみても、信じられる内容ではなかった。

人というのは何故、ありもしない幻想を信じて楽しむのだろうか。

 

「血ぃ吸われるのってこんな感じじゃね?」

「うわっ!!!」

突然首筋に爪を立てられ、オレはつい飛び上がってしまった。

「へへっ!大雅のビビり!!」

「修造!てめぇ…」

そこには同じクラスで同じ掃除場所の修造がいた。

たいして暑苦しくはない、至って普通…て言ったら可哀想だが本当に普通な奴だった。

「やっべぇ!」と言い逃げだす修造、オレも反射的に追いかけだしてしまった。

オレはクラス1足が速いのですぐ捕まえて同じ様に首筋に爪を立ててやった。

「って待てよ大雅っ力強っ痛いだいたいたいた」

「ちょっと男子!?」

あんまり大きくないが、怒る様な声が聞こえた。

「げ、仁奈!」

修造はあからさまに嫌そうな声を出した。

仁奈は傷つきやすいから止めてやれ…修造。

それに仁奈の後ろにいる真琴にも触れてやれ。

それにしてもオレとした事が…。

…終わった事はどうしようもない。これで、図書室掃除、教室の席で決められた班の全員が揃った。

金山修造、岡野仁奈、竹内真琴、そしてオレ、霧矢大雅の4人だ。

ひと班4人なのは無理もない。ここ、市立河井小学校はまあまあ田舎にあるため、ひと学年ひとクラスなのだ。

おかげで団結力が高く、皆下の名前で呼び合う仲になった。

オレの学年、4年生は20人なのだが、今年の1年生は10人なんだとか。廃校になられると困る…。

 

「…はぁっ、まぁいいわ、で?何してたの??」

いかにも怒ってると言う感じに腕を組みながら仁奈は問いかけた。

「あ、あのな、俺たち吸血鬼に血ぃ吸われるのってどんな感じなんだろうって爪で試しあってたんだよ!」

「吸血鬼…」

修造の言葉に仁奈はピクリとし、目を輝かせながら話を始めた。

「吸血鬼…ヴァンパイアって漫画のネタにぴったりじゃない!?…ふむふむ、ヴァンパイアは血を吸うのよ?肌が赤くなるだけじゃ試したことにならないわよ!」

「わーっ!吸血鬼ババアだー!逃げろー!!」

「誰がババアよーーー!!!!!」

あーあ、追いかけっこ始まった。

「ったく、止めねーとじゃないか。」

「さっきどこかの誰かもしてたよね?」

「うっ。」

真琴、それ、禁句。

「てか掃除しなくてよくない?たいして汚くないし、授業以外であんまり人来ないよ!それに、なんか増え鬼みたいで面白そ…キャア!!」

後ろから修造が真琴の首筋に爪を立てた。

「増え鬼じゃねぇぞ!吸血鬼ごっこだ!!」

「ヴァンパイアごっこの方がおしゃれじゃない?」

いやお洒落とかどうでもいいから。

「…どっちでもいいとして、みんな吸血鬼になっちゃったからやり直しな!前回最初に吸血鬼にされた大雅が吸血鬼だぜー!みんな逃げろー!!」

「えっ!?不利すぎでしょ!!!」

「わーっい!」

「っはー!やってやろうじゃん!」

足が遅い仁奈を狙ってオレは走り出した。

 

***

 

オレは吸血鬼の修造と仁奈から机などを利用して逃げていた。

同じ場所を掃除する期間は1週間。この1週間、毎日『吸血鬼ごっこ』、振り仮名を付けて『ヴァンパイアごっこ』をしていた。

そして今日は金曜日。それに、席替えが近く、この4人が集まる事はもう無いだろう。

つまり、最後のヴァンパイアごっこをしていた。

「はっ!2人でそれかよ!」

「ファーイトー!」

「おい、真琴隠れるとかずるいぞ!」

「仁奈、挟み撃ちだ!」

「オッケー!」

「誰が吸血鬼なんかに捕まるか!」

そう叫んだ瞬間、首筋に激しい痛みを感じた。

何故?修造も仁奈もあんなに離れて…

 

「「「「!!!!!」」」」

誰もが驚いて声が出なかった。

 

そこには紅い目を光らせ、オレの首筋を噛んでいる、やせ細った男性がいた。

クリーム色の長い髪を緩く縛り、破れたり土が付いたりしている白いワイシャツに、黒いズボンという、汚れてさえいなければ普通の格好。

しかし、オレの血を吸っているのだ。

 

つまり、本物の吸血鬼。

 

「っ大雅を離せ!!!」

修造により、ぐんっと吸血鬼から引き離されると共に、首筋がエグれる。

そして血が滝のように出てきた。

「「ひぃっ!!!」」

修造と真琴が声を合わせ飛び上がった。

「あっ、あたしっ、先生呼んでくる!!」

遅い足で必死で図書室を出ていく仁奈。

オレはただただ呆然としていて気がついた時には傷口を真琴がハンカチで押さえていた。

すると突然吸血鬼が口を開いた。

また噛まれるんじゃ…そう思い、3人が目を瞑った途端、低く息苦しそうな声が聞こえた。

「…何故…吸血鬼を馬鹿にするような行為をした…」

オレの目をじっと見て言った。

その眼差しは、目を逸らすことが出来ないほど強かった。

オレの口が自然と開いた。

「…だ、だって、貴方の様な非現実的な生き物はいない…つまり誰も怒ることはない…と、思って…。」

絞り出すように声を出した。

吸血鬼はそっと目を閉じ、言った。

「…小さいくせに深く考えてるのだな…まあ…非現実的だよな…無理もな…」

すると吸血鬼は音を立ててたおれた。

「大丈夫ですか!?」

「おい大雅!なんで助けるんだよ!!」

「大雅だもん、誰かを見捨てることはしない」

「…さすが真琴。幼馴染みなだけ大雅のこと分かってる」

大雅が吸血鬼に寄ると、吸血鬼はフッと笑った。

「君は…優しいんだな」

そばに行ったのはいいが、何をすればいいかオレには分からなかった。

この人は吸血鬼…そうか。

「お、オレの血、あげます。」

「いや、いいよ」

「!?…でも、それじゃあ貴方が…」

「いいんだ…でも……」

吸血鬼は、ワイシャツの下の紅く光っているペンダントを取り出し、オレにかざした。

するとそのペンダントから龍の様な細長い黒い光が現れ、オレを囲んだ。

「君には、戦う才能がある」

 

あれから5年、オレは受験生、つまり中学3年生になった。

あの時の事は何一つ覚えていない。

目を覚ますと病室で、お母さんが泣きながらオレを抱きしめてくれた。

退院し、学校に行くと皆が心配してくれて、とても嬉しかった。

しかしあの3人があの時の話をする事は無かった。

オレに何かあったと言われれば、非現実的なものを信じて怖がったりする事が多くなったぐらい。

男のくせになんて情けない。

でも…

 

勉強机の鍵のかかっている引き出しを開けると、そこには深い黒をしたダイヤ型のペンダントがあった。

目覚めた時にお母さんに聞くと、「救急車で運ばれるまでずっと握っていたらしい」と言った。

きっと大事な物だろうと確信したオレは、退院してから、友達から貰ったプレゼントや、100点のテストをしまう、その引き出しに入れていた。

 

ペンダントをしまおうとした瞬間、それは紅く光り、怪しげな黒い光がオレを包んだ。

 

next…Legend1「独り立ち」(変更の可能性あり)