弱虫ヴァンパイアブログ!ヨワブロ!!

創作の小説(プロット)、活動等を公開します!

Legend1「独り立ち」

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*これは漫画のプロット用の小説です

*フィクションです
*誤字脱字はコメント欄または、Twitter(@ yowapro、riisa_motoyama)にて指摘お願いします

*グロテスクな表現があります。あまり酷いものではないと思いますが、苦手な方はブラウザバックをお勧めします

 

 

 黒い空、荒れ果てた地面、私はただただひとりの少女と戦っていた。

戦いはもう終わりに近い。私の負けになるだろう。

黒くて長かった綺麗な髪も、今ではすっかり短くなってしまった。

「フラワーヴァンパイアちゃん、バレバレだよぉ?」

その声が聞こえた途端ものすごい衝撃で、岩は割れ、その陰に隠れていた私は飛ばされ、音を立てて壁に当たった。

これは…地球へのドア…!?

この星が平和だった頃、地球から来る吸血鬼の為に作られた、大きく重そうなドア。

逆に、地球に行くことは許されない…という話を聞いたことがある。

世の中を動かす人達がいなくなった今では、関係のないことなのだけれど。

ありえない方向を向いている指を気にせず、ドアノブに手を掛け、力を振り絞り立ち上がる。体中から血がポタポタと落ちる。

ああ…喉が渇いた。自分の血でもいい、飲んでしまいたい。

私とは逆で、ピンピンしている黒い塊…私がずっと戦ってきた少女が、音もなく歩いてきた。

「えぇ〜まだすんの〜?いつまで頑張る気ぃ??」

「いつまでも……力の…限りっ……戦うわ」

これっぽっちも思ってない。

輝いていた頃の親友が言うであろう言葉を言ってみた。

「ふぅん…」

少女は私と目を合わせず相槌を打つと、私の頭を鷲掴み、顔を近づけた。

「あの世であいつと幸せに暮らしな」

少女はそう言うと、私の頭をドアに叩きつけた。頭がミシッと鳴る。

その反動で、ドアがギィイイと音を立てながら開き、私はそのままドアの向こうの闇の中へ落ちていった。

「…ブーゲンの…バ…カ……」

 

***

 

転入初日。

ボクは、肘より少し上ぐらいの長さをしている金髪の癖毛を左側にまとめ、反対側の横髪にはハート型の赤いピンをパチンととめた。

前の学校の地味な色のブレザーとは違い、鮮やかな青のスカートが特徴的なセーラー服を着て、鏡の前でくるっと回ってみる。どこから見ても女の子。スカートは折るべきかな?みんなを見てから考えよう。

「じゃあ…行ってきます!」

そう言い、愛犬のポム(メスのトイプードル)の方を向くと、ちょこんとおすわりをし、寂しそうな顔でこっちを見ていた。ごめんよポム。ボクは行かなくちゃいけないんだ。

ポムを見ながらドアを閉め、鍵をかける。

前を向いて、黒がベースのゴスロリ系の新品の日傘をさすと、思わず笑みがこぼれた。

ウキウキした気分のまま、ボクは家の前の坂をゆっくり下っていった。

引越し先の河井町は、所々に植えてある桜により、春のポカポカ陽気がもっと暖かく感じた。それは、ボクのこれからの学校生活を祝福しているようだった。

 

そんな外とは異なり、市立河井中学校の体育館はジメジメして寒かった。

「姿勢を正して、礼」

「お願いします」

『お願いします』

先生が挨拶をすると、体育座りをしている生徒たちは一斉に返事をした。

「色々言いたいことがありますが、まずは転入生を紹介したいと思います。菓子屋さん、前に来てもらえる?」

「ふぁっ、ふぁい!」

先生が先にいろんなコトを話すと思って油断してた…最初から失敗だよ…。

体育館の出入口の前から、肩をすくめながら前に出る。

笑っている人もいれば、「ドンマイ」「気にしてないよ」など、優しい声をかけてくれる人もいた。

他にも、「可愛い」「タイプだわ」と呟く、ボクに色目を使っている男子もいた。可哀想に。

「今日から79回生の仲間になる、菓子屋美緒さんです。菓子屋さん、挨拶お願いできる?」

「あ、はい!…中部地方から来ました、菓子屋美緒です!…よぉしくお願いしましゅっ!!」

滑舌悪すぎる人みたいになってるよこれじゃあ…。お辞儀もなかなかおかしかったぞ……。

しかし、みんなは変わらず温かく拍手で迎えてくれた。

よかった…優しい人たちばかりだぁ…。

礼をした体を上げると、ある少女が視界に入った。

 

綺麗…お人形さんみたい……!

整った顔立ちで、透き通った肌。

マシュマロのようにふわふわしてそうな体と唇。

髪は、少し癖がついた肩までの長さで、珍しい桃色をしている。ハーフアップ…って言うのかな?左右の少しの髪を三つ編みにして、後ろでまとめている。とても上品だ。

外にはねている横髪は、天使の羽みたいだった。

 

…って、それどころじゃない!

我に返り、先生の話を聞く。

「菓子屋さんは体が弱く、体育などの一部の授業に参加できません。それから太陽も苦手で、外に出る時は日傘を使うので、理解の上で接してあげてください。そして、みんなが気になってるクラスは、3組です!」

先生がクラスを発表すると、ワッと3組であろうクラスの生徒が喜んだ。

 嬉しい…それだけで喜んでくれるんだ……。

いかにも南国生まれの男性の担任に、クラスメイトの後ろまで誘導してもらっている間も、「よろしく」と声を掛けてくれる子がいた。

学校生活、楽しくなりそうだな…!

これであの、辛くて苦しくて泣いていたボクともお別れできる。

ボクは、前に立つ先生の諸注意をにやけながら聞いた。

 

***

 

「やばいうけるー!」

「おかしいよね〜!」

「ねっ!美緒もそう思うでしょ?」

「ふぇっ!?あ、うん!」

「だよねー!」

あははと2人が笑うのに合わせて、ボクも笑った。

長いブラックベリーカラーの髪全てをポニーテールにしたつり目の少女を、ミルクティーカラーの外はねの癖がよく付いた髪をツインテールにした可愛らしい少女とボクで囲む。

話の中身がない。面白くないなぁ…。

気付かれない大きさでため息をつき、窓の外を見た。

 

ボクが河中…河井中学校に転入してきて1週間がたった。

自分から動かないと変わらない。その通りだと思った。
自分から話しかけることが出来ず、しょうがないという感じで、隣の席の大野桜と、その親友の三鈴まつりのグループに入ることになった。

 

最初は楽しかった。桜…さくといる時は。

ツインテールの子、さくは、ふわふわしていて、優しくて、そんでもって行動力があり、世でいうモテ子だった。

もちろんそれは女子向けても変わらず、ボクとさくが仲良くなるのも時間はかからなかった。

しかし、そこにまつりが入ってきた。

正しくはボクが入ったことになるのだけれど。

ポニーテールの子、まつりは、さくと同じく行動力があるが、性格は正反対。サバサバしていて、少し自分の意見と食い違うとすぐイライラし始めるのだ。

 

昼休み中、まつりの話が止まることがない。

今日も、もうすぐ昼休みが終わるのも気にせず、まつりは話題を変えて話を続ける。

「ねねね!昨日ショッピングセンターの近くで誰か襲われたんだって!」

「あっ!透明人間のやつでしょ〜!?」

「そうそう!」

…なんだそのバカげた噂は。

「てか襲われた人、首筋めっちゃ痛かったらしくて血も出てたんだとか!」

「それ聞いて私思ったんだけどさ、それって〜…吸血鬼じゃない?この地域、なんか言い伝えもあるし」

「言い伝え!?」

突然立ち上がって食いつくボクを、ふたりは驚いた顔で見ていた。

「うぁっ…ごめん……」

ここまで来ると信じてみたくなった。

だって首筋痛くて言い伝えがあるとか本物じゃない!?

なんで透明なのかは謎だけど。

「謝ることないのに〜!えっと…」

「ふたりとも!もう昼休み終わるよ!次、先生が口うるさい社会だから早く席ついとかないと!」

「…ほっほんとだね〜!美緒、行こう!」

ほら、興味ない話になるとこの様。

しょうがなく、さくと自分の席に戻る。

「美緒、美緒」

「ほえっ?」

「さっきの話なんだけど…」

「!」

体をさくに向け、前かがみになって目を輝かせながらさくを見る。

さくはそんなボクを見てクスッと笑うと、話を続けた。

「不思議な力を持つ男が、河井町を災難から守った〜…とか。そのお礼として、血液を与えていたらしいの。神様みたいな存在だったとか!」

「吸血鬼のイメージと全く逆なんだけど!え?すごい!ねねね!見た目とかは!?」

「小学生の時に見た絵だと〜…やっぱり黒っぽい?いや、黒いオーラみたいなのが出てただけかも。紅いペンダントみたいなのもしてた〜!もちろん牙があったし〜、あと紅い目をしてて〜…金髪だった!美緒と同じ!」

「ほへ〜まじかぁ…!でもボクは吸血鬼じゃないぞ〜!まず、血を直視出来ないし」

「そうなの!?じゃあホラー系の見れないんだ!」

「そうなんだよね〜」

 血を直視出来ない、実はなかなかの重症である。

血を見るや否や、目眩が襲い、立っていることも出来なくなってしまう。

ボクが女だったら生理の時どうなっていただろう。

チャイムが鳴り、社会の先生に向けて礼をする。

でも、吸血鬼かぁ…。

2次元から飛び出てきたようなニュースに、ボクはウキウキせざる負えなかった。

 

 

吸血鬼を探そう!…ってことにもならず、それどころか、次の日にはその噂は消えてしまった。

やはり不可思議で信じられなかったのだろう。

そしてボクは今日も変わらず、さくと一緒にまつりを囲んで話を聞く。

しかも放課後に。

もう既に夕日が教室を照らしている。

今日は2人が所属しているテニス部が休みのようだった。

「美緒は無所属だし、暇でしょ?」とまつりに言われ、ボクも居残りすることになった。

いやいやボクには、洗濯物入れて、アイロンかけて、部屋を掃除して、夕食を作って、ポムのエサをあげるっていう任務があるんですけど!

無所属は暇とか決めつけないでくださーい!…なんて言えないけど。

「いやー暇だねー!」

「そうだね〜!」

いやだからボクは暇じゃないんだって!

「家帰ったって鍵空いてないしなー!」

「そうなの〜!?私の家に呼べたらよかったんだけどね〜。親の許可が出ないからなぁ〜」

それでボクを呼び止めたのかよ!!

「…何その顔」

…え?

まつりが低い声で質問する。

誰に向かって言ってんの?

「ちょっとまつ…」

「さくは黙ってて」

…どう考えてもボクだ。

気付かないうちに、考えていることが顔に出てしまったのだろう。

立て直さないと…!

しかし恐怖から、口をパクパクするだけで声が出ない。

「美緒?」

まつりは鬼のような顔でボクを睨み続ける。声もさっきより低い。

どうしよう…どうしよう……どうしよう………

 

「菓子屋さん、ちょっとぃぃかな?」

 

 焦り、恐怖に怯えるボクに、可愛く透き通った声が聞こえた。

3人で、声がする後ろの方を向く。
「…大前…さん?」

あの子だ。

転入初日、目を離せなくなってしまうほど綺麗なあの子。

その日、ボクは教室に着くなり、自分の席からすぐ彼女の席を探し、前方に見つけた。

大前さん。

椅子に貼ってある名前の書かれたシールには苗字しか書かれていないため、下の名前はまだ知らない。

まつりやさくに聞くわけにもいかないし、まつりに聞いても無視されるだろう。

それに、彼女は1人でいることが多かった。

なので誰の口からも彼女の名前が出ることがなかった。

それだけ気になっていた彼女が今、ボクに話しかけてくれている。
「保健委員として話したぃことがぁって」
「ちょっと!美緒は今うちらと…」

「大切なことだから、ちょっと待ってもらぇる?」

「…分かったわよ。早めに済ましてよね!」

大前さんはニコッと笑い、ボクを手招きする。

ふぇええ〜いくら委員として話しかけられたとしても、嬉しくて舞っちゃいそう!

まつりの前を恐る恐る歩き、教室を出る大前さんに軽やかな足取りでついて行く。

落ち着いていられず、サイドテールを手ぐしで整える。

にやけが全然止まらない。抑えないと引かれちゃうぞ!ボク!!

階段の前まで行くと、大前さんは止まり、こちらを向いた。

ボクも近くまで行って止まる。

何を言われるのだろう。そわそわしながら言葉を待つ。

すると大前さんは、ゆっくり口を開いた。

「ねぇ、なんで本当のこと言わないの?」

「え?」

思ってもいなかった言葉に、舞っていた心が物凄い勢いで冷める。

しかも、大前さんの顔は笑っていない。不機嫌そうだ。

声もさっきの女神のような声ではない。いや、充分可愛いんだけど。

「あんた、無理してあいつらといるでしょ」

図星だ…。

質問に答えられず、俯いてしまう。

大前さんは、はぁっとため息をつき、話しを続けた。

「あんな奴らといたって面白くないでしょう?そんなんだったらグループ抜けて1人でいた方が楽でしょう?バカなの?」

「ボクは大前さんみたいに強くない!!!」

さすがに頭に来て、目に涙を溜めながら怒鳴りつける。

そう。彼女がいつも1人でいるのは、クラスに溶け込めないわけではなく、溶け込みたくないからだろう。

愛想笑いで成り立っているグループにいるより、1人で好きなことを考えたりやっていく方が楽で、それをする勇気もある。

それが出来ていないボクに怒りを感じたのだろう。

大前さんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐさま元の表情に戻り、さっきと変わらない口調で吐き捨てた。

「あっそ。そんな生き方してたら、人生面白くないし後悔するわよ」

目の前の階段を降りていく大前さんを見送らず、教室に早足で向かう。

これでよかったんだ。

ボクと大前さんは合わない。

見ているだけで充分なのだ。

元からそうだったじゃないか。

そう自分に言い聞かせ、笑い声の聞こえる教室のドアに手をかけた。

「きゃぁあああ!!!」

思わず振り返る。

何…?今の…大前さんの悲鳴……??

「美緒!」

 ドアの向こうからまつりの声がする。

「早く!終わったんでしょ?話の途中なんだからさっさと戻ってこいよ!」

さっきの悲鳴、聞こえなかったの…?

どう考えても緊急事態だろう。

「早くしろよ!分かってんの!?こっちは待ってやってんだよ!!!」

怒ってる…さっきより怒ってる…!

ここでドアを開けなきゃまつりはもっと怒るだろう。

でも…大前さんはどうなるの……?

 

『そんな生き方してたら、人生面白くないし後悔するわよ』

 

そうだ。

人間として、助けるのが当たり前じゃないか。

体が弱いひとつの原因、極度の喘息持ちのことも忘れ、階段の方へ全力で走る。

教室から響くまつりの声は、もう何とも思わなかった。

 

大前さんの言う通り、グループに囚われすぎていた。

好きでもない人の機嫌をとって、立場を高めて。

まつりのことだから、近いうちにボクのことを気に入らず、手放すだろう。

グループを抜けたって大丈夫だろう?

前の学校では1人だったじゃないか。

慣れっこでしょう?

 

「大前さん!!!」

案の定喘息になり、息を吸う度にヒュウヒュウ鳴らしながら、階段の手すりを持ってブレーキをかける。

「あ…」

そこにあった光景を見た瞬間、目眩が襲い、ひざまずく。

ボタボタと落ちる大量の血。

その先には、大前さんと、彼女を抱える黒い物体がいた。

怖い…!

…でも、今一番怖いと思っているのは、大前さんだ。こちらに応答することも出来ないほど怖がっている。もしかしたら気を失っているかもしれない。

こんなことでへこたれてたらダメだ…!

そう自分に言い聞かせて、手すりを持って立ち上がり、上を見上げる。

するとキラッと輝くものが見え、目を細めた。

何…?

紅い目と…ペンダント…金髪……牙…!

昨日聞いた、さくの話そのままだ。

 

大前さんは吸血鬼に襲われている。

 

本当にいたんだ…吸血鬼……!

…ってそうじゃない!早く大前さんを助けないと!!

ニンニクや十字架など、吸血鬼が苦手そうなものを思いついたが、そんなものはここにない。

大前さんの出血量はかなりだ。

今助けないと死んでしまうだろう。

何か攻撃できるものがないかあたりを見渡す。

…!トイレ!!

トイレの中に駆け込み、壁に掛かっていたデッキブラシを取ってくる。

息苦しいのを我慢し、デッキブラシを吸血鬼に向けると、カスカスの声で全力で叫んだ。

「大前さんを離せ!!」

1秒もなかっただろう。ボクは吸血鬼が投げたモノにより、壁まで飛ばさた。

全身に痛みが走り、少し曲がったデッキブラシを持ちながら、ズルリと壁に沿って座り込む。

足に重みを感じる。温もりがあり、ドロっとした何かも感じる。なんだか嫌な予感がする。

自然と閉じていた目を、恐る恐る開けてみる。

そしてモノの正体を目にし、吐き気を覚えた。

「大前…さん……!?」

吸血鬼はボクを攻撃するのに、大前さんを使っていたのだ。

「大前さん!大前さん!!」

震える手で彼女の肩を揺さぶるが、びくともしない。

まさか…死んだんじゃ……。

脈を確認しようと手を離すと、次は胃の中のものがこみ上げてきた。

手が、どす黒い紅をしていたのだ。

我慢しきれず、床に向けて嘔吐する。

脈を調べようとしても、怖くて動けない。

呼吸がどんどん荒くなる。

体の痛みも治まらず、大前さんを抱えてうずくまることしか出来なくなった。

吸血鬼はそんなボクたちを気にせず、こちらへゆっくりと歩いてくる。

 

ねぇ…こんな悪者がいるんだったら…正義のヒーローだって…いるんでしょ…?

早く…早く助けてよ……!

 

「まだ夕方なのに、何で出てきてんだよ!!!」

目の前に、もうひとつ黒い物体がボクたちをかばうように現れ、吸血鬼を剣で斬る。

吸血鬼はトイレの前まで飛ばされ、返り血が色んなところに飛び散る。

「ひっ!」

もちろんそれはボクにもかかり、さらにうずくまる。

目の前の助けてくれたであろう黒い物体は、こちらを向いて、ボクたちの前でしゃがみこんだ。

目だけで物体を見上げてみる。

スラリとした体、そこそこ広い肩幅。きっと男の人だ。しかもかなりのイケメン。

綺麗な焦げ茶色の髪をしていて、尖った前髪だけ青くなっている。

でも、吸血鬼と同じで全体的に黒っぽい。胸元に紅いペンダントを付けているし、目が紅く、牙がある。

…どっかで見たことある気がする。

その男の人は、ボクのポケットからハンカチと吸入器を出し、そのハンカチでボクの手に付いた血を拭きながら言った。

「菓子屋美緒、怖かっただろう。お前、血も苦手なのにな。良く頑張った。」

「ぇ…?」

なんでボクの名前知ってるの!?

しかも、ボクがポケットに吸入器を持っていることも、血が苦手だってことも知っている。

彼は血を大体拭き取ってから、ボクの手に吸入器をポンッと乗せた。

ボクは渡されるままに吸入をする。効果は数分で現れるだろう。

その間に彼は大前さんの方を向き、吸血鬼が血を吸った場所に手を当てた。

すると、傷は何もなかったかのように消えた。

理解が追いつかないが、傷口が塞がってほっとした。

しかし、大前さんの意識も顔色も戻らない。

彼は、テキパキと大前さんの脈を測りながら呟く。

「良かった、生きている。でも、これは酷い。確か大前のお父さんは医者だったはずだ。」

何この人…全知全能なの…?

「菓子屋!」

「ふぁい!」

相変わらずの『ふぁい』である。

彼はトイレの前で倒れている…いや、立ち上がろうとしている吸血鬼を指差し、話を続けた。

「あいつを一緒に倒したら、大前を一緒に彼女の親の病院まで運んでくれ。」

「はっはい!」

めっちゃ『一緒に』強調するじゃん。

…ちょっと待って!?

『一緒に倒したら』って言った!?!?

「良い返事だ。吸血鬼が見えるお前には、吸血鬼になって戦う才能があるからな!」

「待って!ちょっと待ってください!!」

「何だ?時間が無いんだ。」

「えっとぉ…」

何から聞けばいいんだろう。

「…そうだよな。突然色んな事を言われても理解出来ないよな。」

彼はゆっくり立ち上がり、ボクを見下す形で自己紹介を始めた。

「オレは霧矢大雅。河井中学校の生徒会長をしている。今は、吸血鬼の姿で失礼する。」

そっか!生徒会長!!

始業式や入学式に前に立って話をしていたから見覚えがあったんだ!

それに、予想通り吸血鬼だった。

つまり…正義のヒーローも吸血鬼…?

「で、菓子屋には、吸血鬼になってオレと一緒に戦ってほしい。安心しろ。吸血鬼になるのは戦っている間だけで、変身を解けばいつも通りの姿だ。」

「ほ…ほう……分かりました!…ってなるわけないじゃないですか!!」

「早くしないと大前が死ぬぞ。」

そうだ…。

今、ほのぼのと話している時間はない。

霧矢…先輩?が、ボクを頼っているのは、ボクが必要だからだろう。

自分が吸血鬼…ヒーローになるって言うことにも惹かれる。

何より、大前さんを救わなければ…!

「…分かりました!やります!!」

「良い返事だ!」

先輩は少し嬉しそうにボクを見て微笑んだ。

正直覚悟は出来ていない。今にも気を失いそうだ。

「菓子屋、立てるか?」

「…はい!」

抱えていた大前さんをそっと床に下ろし、全身の痛みに耐えながら、壁を支えにしてゆっくり立ち上がる。

その間に先輩は、大前さんを楽な姿勢にさせていた。

本当になんでも出来るんだなぁ。

「じゃあ、お前を吸血鬼にするからそこに立て。絶対に座ったりしゃがんだりするなよ。」

ボクは深く頷き、息を呑みながら気を付けの姿勢をとる。

先輩は胸の位置にあるペンダントに手を当て、手にこもった紅い光をボクに向けて放った。

 光はボクを囲み、最終的に籠の形になってボクを閉じ込める。

その瞬間、ドシンと重力を感じた。

「…くっ!」

膝に力を入れて必死で耐える。

普段運動をしないボクにはとてもキツくて、今にも倒れそうだ。

体が汗ばんでくる。息も上がり、喘息が再び酷くなる。

耐えながら顔を上げて、籠の外の先輩を見る。

そしてボクは、先輩の視線の先に見つけた。

時計だ。

籠の上にうっすら見えるそれは、物凄いスピードで時を刻んでいる。

そして、短い針が4を過ぎたところでピタッと止まった。次の瞬間だった。

「…っぐぁっ!!」

体を切り裂くような痛みがボクを襲い、耐えきれずに先輩の方へ倒れ込む。

籠は粉々になり、キラキラ輝いていた。

先輩は、当然かのようにボクを支えると、ボソッと呟いた。

「お前、人間として生きる時間、あんまり無いかもな。」

「え…?」

そう言った先輩の口が、ボクの首筋に吸い込まれる。

「…っ!」

首筋に強い痛みを感じる。

先輩の牙がボクの首筋を抉り、噴き出るように血が出てくる。

怖くて目で確認することは出来ない。

大前さんはずっとこの痛みに耐えていたのか…。

先輩が首筋から口を離すと、ボクは黒いオーラのようなものに包まれた。

 

すごい…なんだか力が湧き出でくる。

それと共に、勇気も湧いてきた。

苦しくないし、体の痛さもなくなった。

体が軽い!心も!!

今にもどこか飛び出したい気分!

ボク、今なら大前さんを助けられる気がする…!

ドキドキしながらゆっくり目を開ける。

 

「お前の属性は火。火を苦手とする吸血鬼もいるから、なかなか良い能力だ!」

 

この時、ボクは思いもしなかった。

これが伝説の始まりになるということを。

 

 

next…Legend2「一歩」